昨日はGross National Happiness(GNH。国民総幸福量)の追求を国家理念とするブータンの視察報告をもとに、人を幸せにする政治、幸せを感じられる政治の在り方、また小さな弱い国家や組織がスーパーパワーに飲み込まれないようにするにはどうすべきか?というテーマで、オーストラリアから再び来てくださった伊藤さんなど、参加者の方々と意見交換をしました。
https://www.youtube.com/live/HpIhf-zTH7I
GNHは1972年に即位した第4代シンゲ・ワンチュク国王が提唱し、以来、「GDPよりGNH」を国家運営の中心に据えています。
9つの領域として、人間を幸福にする要素である、健康、教育、文化、環境、地域社会、良い統治、時間の使い方、生活水準、心理的幸福などを重視しているとのこと。実際にブータンに入って目に飛び込んでくるのは、民族衣装を着た人々、そしてあらゆる家々や建物にブータン特有の装飾がなされていることです。ここにしかないものを徹底的に守ろうとしていることが伝わってきます。
実際には若者流出、失業、医師不足、都市への人口の集中、幸福度の低下などブータンも悩みを抱えています。小さな弱い国がどのような戦略で人々の幸福を生み出そうとしているのか、これは、我々にとっても共通するテーマです。
今回はGNHの理論的支柱であり、制度の設計や理論家の中心であるカルマ・ウラ氏(GNH研究所総裁)に会って2時間ほど話を聞くことができたので、幸福度が低下し約6万人が海外へ流出している状況をどう考えるのか?聞いてみました。
カルマ・ウラ氏は、海外に行ってもいい。帰りたくなる国を作るためにGNHがあるというものでした。人々には豊かになる権利がある。私たちがすべきことは、海外に出た若者が豊かになった時、ブータンにしかない価値に気づき、自分の経験を国のために活かしたいと思うような国を作ることだ。この考えは国王とも共有しているとのことでした。GNH的発想では個人の自由が出発点なのです。
一方で、伝統を守るためにこそ、刷新と両立する努力を感じました。
そのためには少ない人員で命を守る技術と制度の構築が重要で、遠隔妊産婦健診、遠隔医療などの日本の技術支援にはとても感謝されました。遠隔医療のためのAI画像診断、電子カルテ共有、ドローンによる医薬品配送、オンライン教育、行政手続きのデジタル化などを、人口が減少する山岳国家だからこそ積極的に取り入れていこうとしています。
もうひとつ驚くべきは、1998年には、第4代国王自ら権力を手放す決断をして、絶対王政の終了、議会への権限移譲、憲法制定などを行ったことです。国王罷免制度まで導入し、将来悪い国王が出現したり、自分たちが良くない存在になった時には国民が国王罷免できる権限を創設したのです。権力を持つ者こそ自らを律する倫理観が必要と、国王が国民の模範になろうとして努力を続けていることに感銘を受けました。
視察をして感じたことは、GNHは決してお花畑のような国を作るためではなく、小国がサバイバルするための最終戦略であること。そのために改革、刷新はするけれど、自分たちは何者であるかという核心は決して手放さないという決意です。グローバル化の中でアイデンティティをどう守るか、今後も注目し、学んでいきたいと思います。
反転攻勢を期していたら、画面まで反転してしまいましたが、再反転させるアプリはコメント欄に貼り付けておきます。
カルマ・ウラ氏と
あちこちにあるマニ車
文化都市プナカのゾン(役所)
『役所』の中がこのような装飾で彩られています!
橋の下を流れる清流には多くの魚が群れていました。
あらゆる場所に国王の写真が飾ってあります